「親水護岸」

 水に親しみやすい⇒「親水性」
 親水性に配慮した護岸⇒「親水護岸」

 そうなんです。
 近年は下水道の普及率向上に伴って河川の水質向上が顕著です。
 例えば、どぶ川だった大阪の道頓堀川にウナギが居たりとか。

 そんなこんなで、都市部においても親水護岸の整備が進むようになりました。  
 川が綺麗でないと、できない話でもあります。
 それはそれで、良い事です。


■都市部の親水護岸の事例を探してきた

 以下の写真は、大阪府高石市の芦田川です。
 「芦田川ふるさと広場」と言って、親水護岸が整備されています。
 住宅街です。
 うちの近所なので、良く傍を通ります。
 本題とは逸れますが、この直上流で地下バイパス流路への分岐機構が備えられています。
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 休日は子供たちが水辺まで降りてきて、水遊びをしています。
 川幅をうまく変化させて澪筋と水が滞留した部分を上手く創造しています。
 早瀬、平瀬、淵、そういった河川構造を人工的に作り出しています。
 ここの場合、多自然型護岸に近づいた構造でもあると思います。
 (底がコンクリート製なので多自然型ではないですが、イメージとして)

 親水護岸とは、単に水に触れられるという構造なので、階段で降りられるだけでOKです。
 親水護岸にするっていうことは、そこまでなのです。

 次の写真が、親水護岸のかなりベーシックな感じです。
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 これも芦田川です。
 さっきの少し下流。
 単に、降りられて、水に触れられる。
 これで親水護岸の要件は満たしています。

 次の写真は、岐阜県の大垣市で見つけた親水護岸です。
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 階段で降りて行って、水辺に触れられます。
 大垣城や大垣駅から近かったと記憶していますが定かではありません。
 何れにしても、都市中心部にあたります。

 次の写真は、京都市内の写真です。
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 水辺まで降りていけます。
 底の部分にベンチがあり、サラリーマン?の方が休憩していますね。
 道路から一段低くて、非日常に浸る感じで気が休まるのではないでしょうか。

 こんな感じで親水護岸は都会の真ん中にも多数あるようになってきました。
 これは、素晴らしいことです。


■親水護岸は管理者にとっては嫌な存在では?

 問題は、ここからです。
 親水護岸。
 素晴らしいです。
 地域の住民や近隣都市からのレジャー客も来るかもしれない。
 夏の休日は大盛況に違いない。
 整備した市町村は大満足。
 だとは思いますが。。。。。

 心配事が増えますよね?
 近年問題となっている都市型出水、都市型洪水です。
 内水氾濫ともリンクします。

 何が問題かと言うと、「短時間での増水」です。
 夏場でのゲリラ豪雨やユウダチの強めでもそうですが、突然雨脚が強くなり、一気に川の水位が上がるのです。夢中で遊んでいると気が付かない。
 都市型てっぽう水とでも言いましょうか。
 私の住む地方であれば、兵庫県の神戸周辺なんかがリスクが大きいです。
 六甲山から大阪湾へ急勾配の3面張り流路がたくさんあって、
 そこは普段は水が無いくらいの状態。
 川底で子供たちも遊べます。

 そこへ短時間に豪雨が見舞われるとてっぽう水が出ます。
 逃げ遅れて被害に遭うって事例が、過去に何度かあったように記憶します。

 つまり、親水護岸として川底の降りられるということは、
 生命の危機に見舞われるリスクを負うことになります。
 大袈裟に言いすぎですが、管理者からすると恐らくそのくらいのリスクでしょう。

 話は一旦、逸れますが、
 実は、都市部でのアスファルト密閉やコンクリートアイランド化で、雨水が地中に沁み込まず、殆どが一気に排水路へ流れ込んで水路や河川の水量を劇的に増加させてしまうのです。
 昔に比べて流出係数が異常に高いのです。
 流出係数は、降った雨が河川へ流下する量を示し、残りは地中で地下水に留まるイメージです。
 その流出係数が、どんどん1.0に近づいているのです。
 1.0とは、全てが河川などへ流出してしまう値です。
 
 <流出係数の例>
 ・畑 0.2~0.5
 ・森林 0.05~0.2
 ・住宅地 0.5~0.8
 ・商業地 0.7~0.95

 都市化が都市型洪水を助長しているのは、これが主原因です。
 温暖化による降雨形態も確かにありますが、都市化によって流出係数が上がっているのです。
 その辺は、あまり強く言うと話がややこしくなるので、気象変化を主原因にもっていっているのじゃないかなぁ~と、私は思っています。
 森林荒廃も当然影響してますよ!
 (個人的感想)

 そんなこんな話はありますが、
 万が一、被害者が出てしまったなら管理者に責任が行くのでしょう。
 裁判になったら、過失ゼロにはならないでしょう。
 それでも都市のアメニティ向上のために親水護岸を整備してくれる官公庁に感謝しないとなりません。

 これって、トレードオフの問題なんですよね。
 都市のアメニティ向上や河川への親しみを向上させること。
 それに対して洪水やてっぽう水リスクがあること。

 リスクがあるから完全に水辺に行けないようにするか?
 リスクはあるが親水護岸をたくさん整備していくか?
 どこに着地点置きますか?って話ですね。

 その着地点。
 私には解りません。
 ただ、管理者も無策では無いです。
 下の写真を見てください。
 
 ちゃんと注意点やルールを提示しています。
 最初に見て頂いた高石市の「芦田川ふるさと広場」の例です。
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 いわゆるソフト対策ですね。
 こうやって、降り口などの見える場所に設置することに意味があると思います。
 素晴らしいですね。
 高石市。

 この掲示ルールに従って、
 出水リスク時にはサイレンや放送が流れます。
 こうやって、被害に遭わないように管理者責任を果たしているのですね。

 これらのシステムを整備するのにもコストがかかります。
 リスクとコストを掛けても都市のアメニティ向上を図りたいという熱い思いを感じますね。


■みんなでリスクに対処すれば命は守れると思う

 あとは、親です。大人です。
 そういった場面(増水リスク時)に遭遇した際に、川の中に居る子供たちに、
 「早く上がらんかい!!」
 「水、来るぞっ!!」

 って、怒鳴れる人。
 水が来る前に、危機を回避させられる知識を有して行動が出来る人。
 そういう防災教育を受けていることが重要でしょう。
 雨が降っている時は「絶対に」川に近づかない。
 こんな基礎的な話から教育していくことが重要ではないでしょうか。

 自分が逃げるのは当然です。
 周りで気が付いたリスクがあれば、注意喚起できる大人になりたいです。
 見て見ぬふりせずに、真っすぐに見れる人。
 少なくとも私は、そうなりたい。
 なれるかな?

 がんばりましょう。
 綺麗ごとじゃなく、なにか出来る人になりたい。
 何事も。