「段丘堆積物」

■段丘堆積物の特徴
 
 締りが良い地盤で、支持力は期待できます。
 N値も30以上を示すでしょう。
 地盤反力度も300KN/m2以上は期待できるでしょう。

 土質としては、砂礫、あるいは粘土混じり砂礫が多いのではないでしょうか。
 強度面では申し分の無い地質(土質)です。

 第三紀あるいは新第三紀に堆積した地層であり、もうひと昔前に堆積していれば半固結の軟岩に近い状態まで至ったであろう地層でもあります。
 河岸段丘や、海岸段丘などがあります。

 そんな未固結度にしては強い地層なのですが、1点、問題点があります。
 植生が着かないのです。


■段丘堆積物は植生が着きにくい 

 写真で見ると早いです。
 下の写真が段丘堆積物にカンガルーネットのような種子付きネットで覆っている切土法面です。
 堺のハーベストの丘に近い道路で見つけました。  
IMG_9400
 パッと見は良く解りません。
IMG_9401
 近づくと、カンガルーネットが見えます。
IMG_9414
 ネットの下には段丘堆積物です。
 円礫が確認できます。
 かなり締まっています。

 なぜ植生は着きにくいのでしょう?
 恐らく、締まり過ぎなのです。
 水分が無い。水分が留まらない。
 根が入らない。入りにくい。
 また、土壌が無い。土壌になり得る有機物が無い。
 こんなところではないでしょうか?

 例えば、崖錐堆積物や崩積土ならどうでしょう?
 N値は10未満。
 有機物も混ざっているでしょう。
 水分も保ちやすいです。
 なので植生が着きやすいです。

 いずれも植生基材吹付を施工すれば植生が生えやすいですが、その後の育成過程で大きな差が出るはずです。
 奥まで根が入る崩積土に対し、カチカチの有機物の少ない段丘堆積物ではやがて植生が枯れるでしょう。干からびるように枯れてしまうはずです。
 そして、結果、写真のような状態になるはずです。


■段丘堆積物に植生工は無理なのか?

 解決策は無いのか?
 どうしても緑化したいなら、覆土が良いと思います。
 10cm程度の覆土層を設けて、植生基材やマット工で覆う。
 そして、種子を工夫する。
 貧栄養下でも耐えられる種類。
 そして、乾燥に強い種類でしょう。

 いずれにしても、慎重に法面緑化工や保護工を選定することが要求されます。
 案外、何も考慮してない場合が多いと思われます。
 土砂層で一括りにして、植生工。
 これでは、植生が着かず、長期的には表層浸食のリスクも生じます。

 景観等にしばりが無いなら、モルタル吹付を選ぶことも選択肢です。
 それくらい、植生は着きにくいと私は思っています。

 どうですか?
 頭の隅に置いておいてください、この記事。
 自分が段丘堆積物の現場に遭遇した時、
 あるいは現場で段丘堆積物の法面を見た時、思い出して見てみてください。

 果たして、私の思想(技術力)は、正しいのか?(笑)
 採点してみてください。

 ちなみに、段丘堆積物で緑化できず、モルタル吹付を採用した事例を過去に紹介しています。
 参考になれば、いいですね。
 【関連記事(緑化受圧板は緑化法面でなくても使える)
 >>>緑化用の受圧板をモルタル吹付面に使用することはある(緑化性能はプラスアルファだから)