鉄筋挿入工(切土補強土工)については、道路公団の高速道路で多用され、NEXCO総研、高速道路株式会社の基準書の制定、改定によって一般的な工法になり、小規模な崩壊対策といえば鉄筋挿入工(切土補強土工)が主流となっています。

 そんな鉄筋挿入工ですが、新設法面工のみならず、既設の構造物や法面に対しても施工される事例が見られます。私も、道路を車で走っている時にいくつも見た記憶はあります。
 車を停めてまで見ることは少ないのですが、現地調査に行く近辺で見つけた時は見て帰るようにしています。目で見る経験というものです。

 そんな鉄筋挿入工の既設構造物への打設ですが、解りやすい事例を見たことがありますので、その時撮影した写真で説明します。
 この写真ですが、奥側は張りコンクリート(化粧型枠)によって被覆されています。
 そして手前が今では珍しい、下が重力式擁壁系で上がコンクリートブロック積の複合擁壁工です。
 その手前側を良く見ると、1.5m千鳥配置で鉄筋挿入工の頭部が確認できます。
 鉄筋挿入工ですべり補強をしているのです。
 当然、背面は埋め土(裏込め土)です。
 そして、その上面は道路です。
 道路面に沈下やクラック等があったのでしょうか?
 それとも老朽化対策(長寿命化)でしょうか?
 いずれにせよ、複合擁壁工に鉄筋挿入工を打設し補強していることは間違いありません。
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 それからもう一点。
 これは、古いモルタル吹付法面に対して、鉄筋挿入工を1.5m千鳥配置で打設しているものです。
 モルタル吹付面自体は、亀裂や剥落等が見られません。
 苔が生すほどの安定感?のような雰囲気がある法面ですが、予防的なものでは無いかと思われます。
 鉄筋挿入工によって、背後の緩みによる崩壊を防止するモデルであると推察されます。
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 このように、既設構造物に対しての補強工としても多用されています。
 令和6年7月に、新しい「切土補強土工法設計・施工要領」が出ましたが、削孔関係で一部記述が修正更新されているくらいで、従来と大差はありませんでした。
 これからも、我が国の道路ネットワーク維持に多用される工法であり続けるでしょう。


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