都市河川においては、矢板を用いた矢板護岸を良く見ると思います。
 従来は、鉛直に護岸を立てられ(断面を最大限に確保でき)バイブロハンマーで容易に打設でき、鋼材も安価でしたので多用されましたが、近年はバイブロの振動問題や施工ヤード、鋼材の腐食等の問題で採用が見送られるケースも増えてきました。

 とは言え、サイレントパイラーやゼロ空間工法、ノンステージング工法などの登場により矢板護岸しか現実的に採用出来ないって場所も増えているのも事実です。施工技術が矢板護岸の可能性を切り開いたとも言えます。大袈裟ですかね。

 さて、今回は現在の施工の話ではなく、既に過去に施工済みの矢板護岸の話です。
 過去に打設されている矢板護岸は防食処理として塗装されたりしていますが、地中に入っている部分は少なくとも打設時に地盤との摩擦を受けますので、防食処理をされていないのが普通です。

 このため、ある一定の頻度で塗装を更新する作業が発生します。
 また、場合によっては塗装すら無い状況で放置されている箇所もあり得るでしょう。
 港湾等では、塩分により腐食が早まりますので、電気防食や犠牲防食対策がされているところもあります。いずれにしても、鋼材ですのでメンテナンスを継続することが要求されます。

 このような矢板護岸ですが、傷んだものを補強する、傷み始める前にメンテナンス面も含めて予防的な対策を講じるなどして長寿命化を図る場合があります。
 そんな事例ですが、意外に身近にあるものです。
 ただし、興味が無い人は殆ど目線が行くことはないものでしょう。

 私の家の近所にも、紹介するに適した事例がありましたので写真を添付します。
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 矢板護岸に防食の塗装処理がなされています。
 添加管がある方は背後に道路がはしっています。
 この矢板護岸のすぐ下流は長寿命化対策が施されています。
 それが次の写真です。
IMG_7665
 先の写真とは反対側からの撮影です。添加管の位置で理解お願いします。
 矢板護岸の前面(全面)に、コンクリートパネルが張り付けられています。
 私は、この施工中の状況を肉眼で見たことがあるのですが、その時は写真を撮ろうという思いがありませんでしたので写真が無いのです。すみません。
 
 思い出す限りですが、プレキャストのコンクリートパネルを溶接か何かをしたアンカーのようなもので矢板面にセットしていき、その背面の空洞に生コンクリートを打設していたように思います。
 単純に言うと、矢板護岸の表側をコンクリートで覆った、ということでしょう。

 これにより、腐食による劣化を抑えることができます。
 コンクリートに接する鋼材には、不動態皮膜が形成され、金属が錆びるのを防止する効果があります。これが鉄筋コンクリートが長持ちする理由でもあります。
 (ただし、中性化による不導体被膜の消失が経年劣化で生じるので永遠の性能ではありません)

 まったく別の現場で、かつ新設護岸でもあるので比較対象にはならないのですが、矢板の前にコンクリートを打設するという状況が解りやすい写真がありましたので添付します。
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 矢板前面にコンクリートを張ってきている状況です。コンクリート打設済みの部分と未だの部分で断面が確認できます。配筋されていることも断面にて確認できます。
 あくまでイメージを沸かせるための事例ですが、矢板の前面にコンクリート張るというのはこのような感じです。
 ちなにみ、手前に見えている打設済み矢板は、かなり突出しているように見えますが、これは最終的にカットされます。サイレントパイラー(クラッシュパイラー)の爪が掴む部分として50cmほど掴み代が必要ですので、それです。地面より上に50cmほど突出しています。
 
 最後に1点、追加ですが、コンクリート打設で前面は防食性能が上がったよ、というのは理解できますが、地中あるいは矢板背面はどうなの?という疑問が生まれます。
 これについては、地中あるいは背面は酸素の動きが極めて小さく、腐食の速度も同様に極めて遅い状況となるため、設計当初から腐食代を見込んでおけば長期間の性能維持が可能となるのです。
 
 一般的な矢板護岸に着目するだけで、様々なことが見えてきます。
 ひとつひとつの対象でも結構深い知識や経験が必要なので、技術屋っていうのは部門や構造物毎にプロが存在することになります。なんでもかんでもプロフェッショナルなんて人は、そう居ません。
 知らないことが多くても、何の恥でもありません。
 先ずは、個々に進んでいる専門分野でプロフェッショナルになれるよう頑張ることが重要なのです。

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