斜面、法面対策における抑止工(グラウンドアンカー,鉄筋挿入工など)の受圧板ですが、緑化性能を持った製品も多々開発されています。
 その先駆けなのがグリーンパネルです。その後も各社、多数の製品があり、経済性だけで見れば物価版や製品販売価格表での比較になります。それぞれソックリなのもありますが、材質が異なったり細かなデザインが異なったりと、工夫が凝らされています。
 形状(クロス、スクエアなど)や受圧面積により選択肢が狭められるとは言え、最終採用製品の選択はなかなか大変です。最近では地産製品優先(県内に工場があるのも優先あり)の県もあったりとケースバイケースではないでしょうか。

 さて、本題ですが、これら緑化機能を持つ受圧板を緑化目的が無いケースでも使用するのか、という話ですが、答えはアリです。
 緑化の性能はウリではあるでしょうが、本来の性能にプラスアルファの性能であり、それを利用しなくとも受圧構造物として問題なく使用できます。
 必ずしも緑化をしなければならないという規定はありません。
 
 施工事例です。私も設計に関係した現場の写真です。
 モルタル吹付に、グリーンパネル工という組み合わせです。
 逆巻でカットしながら打設しながら法面を築造するものでした。
 受圧板として機能しています。標準とされる1.5m千鳥配置です。
 グリーンパネルが鉄筋挿入工を受けて、頭部にベルキャップ処理しています。
DSCI0585
 
 この現場は、いろいろと諸事情があってモルタル吹付を採用せねばならなかったのですが、受圧板についてはグリーンパネルが最も比較評価が高かったのです。記憶が薄いですが、受圧面積、コストだったと思います。当時は製品も少なかったので、比較は簡単だったかも知れません。
 そしてモルタル吹付を採用する際に考慮されたのは、下の写真に示した地質条件です。
 小円礫が締まった土質で、段丘堆積物だったと記憶します。
 緑化しにくい土質で、この辺では植生が活着しないので、植生は止めておいてといった要望もあったかなと思います。
DSCI0579

 下の写真は、ついでですが、奈良県内の道路を走ってて見えたモルタル吹付へKITフレームを受圧板にした法面です。KITフレームも緑化性能を有する製品ですが、別に緑化が必須ではありません。

 このように、製品に付加された性能を、全て無理に生かす必要は無く、使いたい、あるいは評価したい性能部分で優れていれば、それ以外の付加機能については無視しても問題は無いのです。
 要求される性能(例えばアンカー力を受け止め、地盤反力度に耐えられる面積を有する)があれば、それで経済性や施工性が優れれば、選択しない理由は無いのです。

DSCI2127


 このようなモルタル吹付法面の採用は、景観とは逆行するみたいですが、こういう工法採用する事例もあるということです。植生が活着しない可能性のある場所(法面)で、緑化工法を採用することこそ愚かな行為となりがちですから注意が必要です。
 参考ですが、法面の標準勾配は、緑化程度の法面処理があって(永続して)の数値であるため、植生が消失した後は安定を保てない恐れがあるということを認識しておく必要があります。
 参考記事:急斜面における表土や土砂層は急勾配なのになぜ崩れないのか 

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