砂防堰堤(ダム)の種類は、その機構によって数種類の基本形が存在します。
 その基本形からの派生形もいくつかある状況です。
 また、堰堤を構成する主要材料からも幾つかタイプがありますので機会があれば別途紹介します。
 (INSEM材、栗石等をコアとして鋼材やブロックで壁面構成するの比較的新しいタイプです)
 参考に、コンクリートを主体としない砂防堰堤の写真を1基だけ添付します。
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 それでは、一般的なコンクリート砂防堰堤について見ていきます。 
 では、まずは標準的なコンクリート重力式砂防堰堤の不透過型です。
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 砂防堰堤本体の水通しから流木が越流するリスクがあるため前庭工にある垂直壁に鋼製の流木止め工の設置が新しい基準では必要となります。旧来の基準であれば流木止が無い場合が多いです。

 次が、コンクリート重力式砂防堰堤の透過型になります。
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 水通し部に鋼製のスリットが入ることで、流木もここで補足できるため効率的となります。
 落差が無いため、前庭工も基本不要になります。 
 写真の場合、前庭工相当部はカゴ工により下流の渓流保全工への擦り付けを図っています。

 なお、写真は無いのですが、不透過型の水通し部を下げて、そこに鋼製流木止を設置する部分透過型タイプもあり、上記の不透過、透過型の中間タイプとなります。前庭工に流木止は要りませんが、落差は残るため前庭工の省略はできません。

 次に示すのが、コンクリート重力式砂防堰堤の透過型で、旧来のスリット型堰堤です。
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 透過型堰堤の先駆けのタイプで今では土石流対策には採用はありませんが、本川における上下流の生態系保全や通常時の土砂を流せる(流砂系の維持)施設という目的で採用は続いているようです。
 流域砂防と呼ばれる施設としては、これからも環境保全のために重宝される形式と思われます。

 最後に、上記のスリット型の特殊タイプです。
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 これは、福岡県で2021年に撮影したもので、後で調べたら特殊形状のスリットをもつ砂防堰堤でした。施工中の状況で、なんだろう?これ。っといった興味から写真を撮っていました。
 後で調べたところ、洪水時に土砂を溜め、平時に徐々に流れていく、あるいは平時は流砂系に影響しない機能を持っているものです。
 模型実験などもされ、検証された形状のようです。
 興味のある方は、ネットで調べてみると関連する文献等が見られると思います。

 このように、一見、おんなじ形をしているように見えますが、詳しく見ると色々なものがあるのです。機能も違えば構造計算の条件も異なるので、設計する方は案外と大変ですよ。

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 砂防堰堤(ダム)の設計は構造計算の前で成否が決着すると言っても過言ではない