グラウンドアンカー工は、地すべり地や大きな土圧が作用する土留め工などに用いられる抑止工の一種です。定着体と自由帳部、そして頭部に大別され受圧板などの構造物によって緊張固定されます。
 細かいことは、「グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説 JGS4101-2012」公益社団法人 地盤工学会を参照ください。

 そんなグラウンドアンカー工ですが、法面(切土法面を主)に対しても抑止工として採用されます。
 主なケースとしては次の通りです。

 ・地すべり地や地すべりブロックを切土せざるを得ない状況で抑止するとき
 ・切土法面築造に際して応力解放等によりすべり変状が発生する懸念が高いとき
  (施工中に実際に変状が発生した場合に追加するケースも含む)

 このように、おおきく2つに大別されます。
 いずれにしても、法面が動こうとするのをアンカ-力で抑止するもので間違いありません。
 機能的な思想から次の緊張力導入方法があります。

 ・引き止め効果を期待・・・動こうとする土塊に対して鋼材の引っ張り力で対抗する。
              概ね50%~100%未満の初期緊張力を導入する。
              打設角は緩い傾向にある。
              動き始めて抵抗力が向上する待ち受け思想。
 ・締め付け効果を期待・・・動こうとする土塊に対して鋼材の引っ張り力で発生する
              すべり面を押さえる力で対抗する。摩擦力の向上。
              初期緊張力は100%が多い(押さえないと力が出ない)。
              押さえつけて動かないようにする思想。
 ・上記の両方を期待 ・・・初期緊張力100%あるいはそれに近い状態であると上記両方が
              期待できるため両方を評価する最も経済的な考え方。
 
 これらの機能は、現場のシチュエーションに合わせて、あるいは発注者の技術基準に合わせて選択する必要がありますが、現在は両方の機能を期待する方式が多い傾向にあります。
 
 ウンチクはこの辺にして、ここから本題です。
 アンカ-工はすべり対象の運動方向に対して正対する方向に打設するのが普通です。
 しかしながら、地すべりの方向や地層の条件(流れ盤やその方向など)によっては法面等に正に滑動してこない場合もあります。
 その時は、水平方向の角度補正により応力を増してあげれば問題はありません。

 一方、法面やアンカー工を定着させる面が一律でない場合が稀にあります。
 アンカー工は一定方向に並行に打設していきますが、頭部・受圧板が変化面に追随するようにセットしなければならず、この制約によって工法選択が振り出しにもどったり、コスト増になる処置が必要になったりします。
 よくやるのが写真のようなゲタを履かせる方法です。
 ただ、この写真の事例は、ものすごくダイナミックです(私の現場では無く通りすがりに発見)。
 ゲタ自体が落ちないか不安になるくらいの規模です。
 いずれにしても、こんな感じでアンカー工の打設方向を維持するのです。
IMG_5313
 (大仏様の頭のようであり、ロケットランチャー発射口のようであり)

 ちなみに、写真の受圧板は現場打ちコンクリート受圧板で、最近では珍しいのではないでしょうか。
 一時期、生コン打設で現場施工の方が安かった時期があり、結構採用されていました。
 現在は、コンクリートが高騰し、かつベテラン型枠工も減少している、施工期間が延びる等の理由で採用は減っているはずです。
 こうゆう苦闘の結晶?のような現場を見ると、設計業務は様々な検討や工夫、苦闘によってなし得ることができる業務であるとつくづく思います。