工事では施工不良や品質偽装といった行為が発生することがありますが、法面工事においても同じように工事なので施工不良という問題はついてまわります。 

 その施工不良が故意だったか、不可抗力でそうなったかの議論は別物として、実際に施工不良によって施工した法面工が崩壊した事例を示します。もう5年くらいの事なので現在は補修工事が行われ完了しているでしょう。

 当時は、私たちのチームで設計した現場であったことから、完成法面が崩れたのだが設計ミスでは無いのか?との問い合わせがあり、その状況を知ることになりました。

 現場に急行すると、その状況に唖然とした記憶があります。
 なんと、鉄筋挿入付き受圧板工(グリーンパネル)がことごとく抜けている(正確には周りの土砂が抜け落ちている)状況で、補強材(鉄筋)とグリーンパネルが宙でブランブランになっていたり、土砂の流出で地表面が下がり、補強材(鉄筋)が突き出したように見えたりと異様な光景でした。
 その時の写真、ありましたので貴重な事例として添付します。
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 受圧板の下(地表面)から土砂が抜け落ちて受圧板が浮いています。
 補強材が露出して、あるはずのグラウトが認められません。

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 こちらも同様に土砂が抜け落ち、補強材が突き出した状況になっています。
 一番右に見える補強材の根元(受圧板側)に僅かにグラウトが確認できます。

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 唯一といっていいほどのグラウトが付着している補強材が見つかりました。

 このように、崩壊した法面工(鉄筋挿入付き受圧板工)の重要構造であるグラウト材がほとんど確認できないという特異な状況を呈していました。  
 発注者と一緒に法面に登って確認したのですが、こりゃ酷いなぁ。。。。というコメントと共に絶句されていた記憶があります。

 ここまでグラウト充填不良があると切土補強土効果は発揮されないので、崩れて当然かと思います。
 現状安全率FS=1.0スタートだったとすると、対策後もFS=1.0と大差なかったことになります。
 もっと深読みすると、削孔により地山内を乱しまっくたことにより不安定化させたかも知れません。
 現実的には、土砂層の緩みを進行させたはずなので、斜面の安全率は低下していたのでしょう。

 皮肉では無いですが、緑化は素晴らしく美しく施工され植生が繁茂していました。
 グリーンパネル上にも植生が活着し、裏返しになったパネルにも植生が張り付いたままの状態でした。グリーンパネルの植生活着能力の高さを改めて確認できました。
 崩れる前は、まるで全てを覆い隠すかのように一面、緑の植生法面が広がっていたはずです。

 そして、この現場(法面)が山中の公共道路から少し入った場所であったことが不幸中の幸いでした。
 もし、交通量の多い公共道路に面する法面であったら人的被害や道路規制に伴う経済損失が生じていたかも知れません。

 バレなきゃいいって故意だとしたら酷い話ですが、法面工のような斜面に施工する構造物は品質確保しないと崩れてしまうというリスクをもっているため、簡単に手抜き工事はできないことくらいは知っているはずです。
 かといって技量不足や知識不足などで悪気は無かった施工不良も、当然だめなんですがね。

 こういった現場も、知識や経験値の向上、設計時、施工時の留意点の大切さなどを身をもって知るという観点から、技術者個々としては素晴らしい経験です。
 ただし、事業の視点から見ると、有ってはならない事態であることは強く申しておきます。