斜面調査における崩壊性の兆候で着目される事項として、最も目につきやすい樹木の根曲がりが挙げられます。根曲がりは読んで字のごとくなのですが、根が曲がっているというより根元が曲がっているというものです。私の経験と知識からで恐縮ですが、根曲がりを確認したときの判断に係わる考察のようなことを書きたいと思います。
 まずは私が見た現場で恐縮ですが、写真で示したのが根曲がりの典型です。
IMG_4619
(崩壊滑落崖の上方斜面の樹木の根元が曲がっています)

 樹木が曲がって生えているのが解ります。
 根元から一旦谷側へ伸び、そこから曲がって天へ向かって伸びているように見れます。
 これは、樹木が真っすぐ自立しようとする性質が表れており、谷側へ斜面の表層が引っ張られてズレる(クリープ)ことにより樹木は谷側へ倒れて行くのですが、天へ向かって伸びようとするので樹木は起き上がろうとします。この過程で徐々に根元が曲がっていくのです。
 したがって、根元の曲がりが大きいほど表層のズレ(クリープ)が大きいと推察されます。

 そのようなズレ(クリープ)が大きい箇所は、豪雨時等に崩壊するリスクが高いと言えます。
 また、根曲がりの状況によっては、単に表層崩壊だけでは無く、地すべりや深層崩壊のリスクも潜在している恐れがあります。
 例えばですが、次の写真です。
IMG_4620
(斜面上方へ向かって撮影:樹木の曲がりが左右にも生じ不規則な部分もあります)

 この写真を見てわかるのは、斜面上方に向かって撮影した写真にもかかわらず、樹木が左右に曲がっています。
 もっと言うと、最初の写真の樹木も、くねくねS字状になっているものがあると思います。
 
 このような現象は、斜面の表層部分が不規則に移動している可能性を示唆しています。
 つまりは地すべり性の変動や深層崩壊の潜在的な移動を示しているかも知れないのです。
 あくまで一つの情報ですので、これをもって事象を決定することはできませんが、何らかの原因がなければこのような樹木の変化は生じないため、詳細に調査をしていかねばなりません。
 ボーリング調査をおこなうのであれば地中変位計を設置して観測するとか、様子だけみるなら伸縮計等を設置するなどの対応が考えられます。

 一方、根曲がりは斜面であれば一定量生じます。斜面勾配が急なほど生じやすいです。樹木の自重などで根元や周辺地盤を押し下げる効果もありますので、それがクリープという現象となるからです。
 よって、一概に根曲がりがあると滑るというのではなく、その程度や状況を鑑みて判断しなければならず、経験に大きく左右されることとなります。
 このように、地表踏査は表面だけの情報ですが有益な情報が多々得られますので大事なプロセスであると言えます。
 (現地踏査の取りまとめの充実については別の記事でも書いてますので参照ください)