何年か前ですが、老朽化した擁壁の補修設計というのに参加しました。
 写真のように塩害により被害を受けて老朽化が急速に進んでいました。
 井桁擁壁とよばれる排水性、可撓性に有利な擁壁構造となっております。
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(塩害により鉄筋が腐食膨張してコンクリート躯体を破壊しています)

 この状態を放置すると、鉄筋膨張が継続してすべての躯体を破壊しつくし構造体を維持できなくなります。
 このため、補修・更新が必要なのですが、この現場でのやっかいな条件が存在していまして、それがこの井桁擁壁が地すべり地の末端擁壁であるということでした。地すべり地なので、排水性、可撓性が重視されたのでしょう。この当時は塩害に対してあまり目が行っていなかったと思います。海が目の前なので、今なら最重要課題となるはずです。
 地すべり地末端ですので、この擁壁を更新しようとして、掘削・撤去を図ると地すべりのカウンターウェイトをロストして地すべりが滑動するリスクを有しているということです。安易に撤去できないのです。
 このため、更新しようした場合に採れる方法としては、井桁擁壁背後に抑止杭工等の杭を打設し、掘削時のウエイト・ロスト分を受け持って擁壁を新しい構造体に更新するという方法があります。杭工を恒久仕様とすることで、擁壁部分は土圧が軽減されて規模が小さくできます。
 とは言っても、杭工のコストは膨大で、削孔機械搬入や杭材搬入建て込み等を考えると、その仮設規模は相当な規模になります。
 とすると、残された方法は、今ある井桁擁壁の前面(全面)に新しいコンクリート擁壁を張り付けるような形で設置するというものです。カウンターウェイト増なので地すべりにはプラスになります。もちろん前面に用地の余裕が無いと実現できません。
 併せて排水性には注意しなければなりませんが、施工は簡単です。

 そのような思考プロセスで、最終的にはブロック積、大型ブロック積により全面を覆い尽くす方法を採用しました。コストと施工性と実現性を総合的に思案した結果です。
 (既に施工され、特に変状等もない状況です。写真は無くてすみません)
 
 ただし、いやいや杭打って完全更新だよ、あるいはそれ以外の方法だよ、という人も居るでしょう。
 構造物補修設計は、様々な方法があるほか、必ず正解と言われる方法も無いことが多いので、意見が分かれて当然かも知れません。
 そういった内容を討論、議論しながら技術は発展していくものと思います。
 ほんと、技術(技術者)の世界に勉強の終わりは無いんですよね。