私も砂防堰堤(ダム)の設計はしたことがありますが、とにかく構造計算の前の条件設定が大変です。
条件設定のあとの構造計算は、
・水通し部,HWL位置,袖天端の3位置で、安定計算するのが標準
・洪水時、満砂時、土石流時のケースで検証
・両翼へ向かって(袖貫入へ向かって)基礎地盤の状況が変化する場合は変化点で同様に検証
・断面積(体積)が最も小さい状況で安定する形状を採用(コンクリート量が少ないとコスト少)
のように、かなり機械的に決まってきます。
また、正面から見た時の展開形状についても細かく段替えや貫入(根入れ)厚が規定されており、基準書を見ながら比較的簡単に図面を書き上げていくことは可能です。
私が設計した砂防堰堤の写真がありましたので添付します。

(正面からの全景。登りのコンクリート舗装路は管理用道路)

(横方向からの写真。鋼製スリット=Jスリットが入ってます)
(透過型なので、前庭工は省略しています)
では、何がそんなに条件設定が大変(重要)なのか?
砂防堰堤の構造計算をするには、外力を設定する必要があります。また、所定の整備率(仕様)を満たすために背面の容量を確保しなければなりません。つまり、まずは整備率を確保できる堰堤の高さを決めて、その後に外力に耐えられる断面形状を構造計算で決定するという流れになります。
(細かく言うと、堰堤軸位置もコストミニマムになるように比較検討しなければならない)
これらの検討作業を進めるために、その前段で砂防渓流調査を行います。
この調査は、対象の砂防堰堤の流域界内を渓流沿いに山頂(0次谷最上流)まで存在する支流を全てくまなく調査します。これが結構大変で、体力と地形を見る能力が必要です。
地形図や航空写真、レーザー測量図で予めめぼしをつけてから登るのですが、細かな渓流形状は登ってみたら事前の予想と大抵違うのです。その都度、補正しながら調査する能力が必要となります。
併せて、立ち木調査としてコドラート調査をするので、4~5人の班編成が必要です。
この時点で、個人事務所では厳しいですね。
渓流に入れば、谷次変化(山頂を0とし、下流へ合流する度に谷次数が上がる)に伴って渓流の断面調査をおこない、形状、土砂堆積状況等を調査票に整理します。併せて、前述の立ち木調査です。
渓流断面調査は流出する土砂の量を決め、立ち木調査は流木量を決めるための調査です。
これらの結果を踏まえて、縦断図と渓流状況図(平面図)が出来上がり、ここから流出土砂量の決定、流木量の決定をおこない、計画基準点(主として堰堤計画地点付近)での各量を決定します。
さらに、最大1波の土石流量を基準通り求め、各種流下勾配等を定めたうえで堰堤高さならびに断面検討を行うことになります。
ここまでの設定が砂防堰堤設計業務の心臓部分です。ここさえクリアすれば、あとは大丈夫。ある意味、ここをしっかり照査しておけば、まぁさすがに大丈夫でしょう、というところ。
それくらい重要ですが、よく間違える。
例えば、現渓床勾配、土石流流下勾配などが間違えやすいです。若手技術者であれば最初は間違えるのが普通です。基準書だけでは難しいんですよね、縦断形状が同じ渓流(現場)なんてないので、ケースバイケースになり、基準書にかかれているほど簡単ではないのです。
それから、発注者やその上で細かく確認されるのが各渓流の断面調査票です。土砂量が砂防堰堤の規模を決めることになるので、調査がいい加減、整理がいい加減であれば適正な規模の砂防堰堤にならなくなってしまいます。
会計検査で指摘される前に、予算取りの審査段階でダメ出しをくらいます。
構造計算については、計算書を照査すれば必要な計算や結果ができているかは解ります。
しかし、その前提条件、基本条件が正しいかは、その前段の整理を徹底的に照査しないと大ミスを犯すことになるため本当に気が抜けないです。
なので、私はあんまり好きではないです(笑)
砂防堰堤を見かけたら、意外と大変なんだね設計するのって。と思っていただければ幸いです。
釈迦に説法かもしれませんが、砂防堰堤設計に携わる人は、前提条件の整理は何度もチェックして、照査受けて、進めましょうね。大変な手戻りや大ミスを引き起こして苦しむのは自分なのですから。
頑張れ若手技術者たちよ。
<関連記事(砂防堰堤の種類)>
↓ ↓ ↓
砂防堰堤の種類(機構)は様々です(不透過、透過、特殊透過)
条件設定のあとの構造計算は、
・水通し部,HWL位置,袖天端の3位置で、安定計算するのが標準
・洪水時、満砂時、土石流時のケースで検証
・両翼へ向かって(袖貫入へ向かって)基礎地盤の状況が変化する場合は変化点で同様に検証
・断面積(体積)が最も小さい状況で安定する形状を採用(コンクリート量が少ないとコスト少)
のように、かなり機械的に決まってきます。
また、正面から見た時の展開形状についても細かく段替えや貫入(根入れ)厚が規定されており、基準書を見ながら比較的簡単に図面を書き上げていくことは可能です。
私が設計した砂防堰堤の写真がありましたので添付します。

(正面からの全景。登りのコンクリート舗装路は管理用道路)

(横方向からの写真。鋼製スリット=Jスリットが入ってます)
(透過型なので、前庭工は省略しています)
では、何がそんなに条件設定が大変(重要)なのか?
砂防堰堤の構造計算をするには、外力を設定する必要があります。また、所定の整備率(仕様)を満たすために背面の容量を確保しなければなりません。つまり、まずは整備率を確保できる堰堤の高さを決めて、その後に外力に耐えられる断面形状を構造計算で決定するという流れになります。
(細かく言うと、堰堤軸位置もコストミニマムになるように比較検討しなければならない)
これらの検討作業を進めるために、その前段で砂防渓流調査を行います。
この調査は、対象の砂防堰堤の流域界内を渓流沿いに山頂(0次谷最上流)まで存在する支流を全てくまなく調査します。これが結構大変で、体力と地形を見る能力が必要です。
地形図や航空写真、レーザー測量図で予めめぼしをつけてから登るのですが、細かな渓流形状は登ってみたら事前の予想と大抵違うのです。その都度、補正しながら調査する能力が必要となります。
併せて、立ち木調査としてコドラート調査をするので、4~5人の班編成が必要です。
この時点で、個人事務所では厳しいですね。
渓流に入れば、谷次変化(山頂を0とし、下流へ合流する度に谷次数が上がる)に伴って渓流の断面調査をおこない、形状、土砂堆積状況等を調査票に整理します。併せて、前述の立ち木調査です。
渓流断面調査は流出する土砂の量を決め、立ち木調査は流木量を決めるための調査です。
これらの結果を踏まえて、縦断図と渓流状況図(平面図)が出来上がり、ここから流出土砂量の決定、流木量の決定をおこない、計画基準点(主として堰堤計画地点付近)での各量を決定します。
さらに、最大1波の土石流量を基準通り求め、各種流下勾配等を定めたうえで堰堤高さならびに断面検討を行うことになります。
ここまでの設定が砂防堰堤設計業務の心臓部分です。ここさえクリアすれば、あとは大丈夫。ある意味、ここをしっかり照査しておけば、まぁさすがに大丈夫でしょう、というところ。
それくらい重要ですが、よく間違える。
例えば、現渓床勾配、土石流流下勾配などが間違えやすいです。若手技術者であれば最初は間違えるのが普通です。基準書だけでは難しいんですよね、縦断形状が同じ渓流(現場)なんてないので、ケースバイケースになり、基準書にかかれているほど簡単ではないのです。
それから、発注者やその上で細かく確認されるのが各渓流の断面調査票です。土砂量が砂防堰堤の規模を決めることになるので、調査がいい加減、整理がいい加減であれば適正な規模の砂防堰堤にならなくなってしまいます。
会計検査で指摘される前に、予算取りの審査段階でダメ出しをくらいます。
構造計算については、計算書を照査すれば必要な計算や結果ができているかは解ります。
しかし、その前提条件、基本条件が正しいかは、その前段の整理を徹底的に照査しないと大ミスを犯すことになるため本当に気が抜けないです。
なので、私はあんまり好きではないです(笑)
砂防堰堤を見かけたら、意外と大変なんだね設計するのって。と思っていただければ幸いです。
釈迦に説法かもしれませんが、砂防堰堤設計に携わる人は、前提条件の整理は何度もチェックして、照査受けて、進めましょうね。大変な手戻りや大ミスを引き起こして苦しむのは自分なのですから。
頑張れ若手技術者たちよ。
<関連記事(砂防堰堤の種類)>
↓ ↓ ↓
砂防堰堤の種類(機構)は様々です(不透過、透過、特殊透過)
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