「土砂災害防止対策の事業の流れ」
こんにちは。
斜面防災設計の上岡地盤防災です。
今日は専門である斜面防災対策(土砂災害防止対策)事業の流れについてのお話です。
土砂災害防止対策の事業の流れ、すなわち、対策工事を行うために必要な設計図などを作成して対策工事を発注するまでの簡単な手順を説明します。
工事が発注される前までの流れという感じでしょうか。
なお、土砂災害の大分類として次の3つがありますが、これら全てを踏まえてたザクっとした説明とします。そう、大体どれにでも当てはまるという感じの説明で。
・がけ崩れ(崩壊・落石)
・地すべり
・土石流
■ステップ概要(流れ)
最初に、ステップ(流れ)の概要を列挙します。
・事業対象に選定
・基本調査と事業計画
・測量
・詳細調査
・予備設計
・詳細設計
土砂災害防止対策全般を踏まえてなので対象によっては手法も違うし、細かくは前後したり繰り返したりする作業もあるのでの、あくまで全体的なという流れです。
■事業(対策)対象に選定
まず、ソコが事業の対象に選ばれるところからです。
なぜ、ソコで土砂災害対策工事をするのか?
それは、法令等で指定されている場所であることが多いです。
そして、それを優先順位をつけて順番に対策していくのが一般的です。
一度に、全ての箇所を対策するのは、予算が無くて不可能です。
重点施策で予算が増えることがあっても短期で全部できることは無いです。
では、法令等で指定されているとは?
例えば代表的なのが「土砂災害警戒区域」等です。
既往であれば、急傾斜地崩壊防止区域だったり地すべり防止区域、砂防指定地などです。
結果、これらはオーバーラップしていることがほとんどですが。
それに加えて、地元からの陳情でしょう。
〇〇の渓流が危険で、住めない!とかの陳情。
このほか、各種点検業務で何らかの異常が認められた箇所。例えば災害の兆候が見えるとか。
それから、政策等によって重点対策分野に指定された等でしょう。
そんなこんなで、ソコが選ばれたのには、ちゃんとした理由があるのです。
これらは、事業箇所優先度を検討する建設コンサルタント業務なんかもあったりしますが、基本は発注者(事業者)でやられている作業だと思います。
■基本調査と事業計画の策定
この作業あたりから、建設コンサルタントが入ってきます。
もちろん、発注者(事業者)自前でやる場合もあるでしょう。
その場所で、対策工事をすることが決まったら。
まずはじめに、基本図(指定地資料など)を基に、保全対象や対策対象の概況について資料整理します。
(選定される際に、ある程度資料は揃っているはずですが)
この時に、各種法令に指定されていないか等も一通り調査されます。
調査と言っても、各窓口に閲覧などして確認していく形となります。
概ねは既往の指定地等の資料に記載されていますが、誤りが無いか、追加されていないか等の確認になります。
特に、保安林に指定されていたりすると解除の段取り等もあるので、確認漏れが無いようにしないとなりません。
工事に入る段階で、保安林にかかっている!なんてことになると、こりゃ大変ですから。
もちろん、風致地区とか自然環境保全関連の指定区域だと、相当に条件が厳しくなるのです。
それらの確認後、どのような対策工が考えられ、どのような測量・調査が必要で、といったようなアラスジのようなものを作成します。
作成したアラスジに基づいて、事業の概略コストも算出されます。
加えて、保全対象の価値を予め指定された単価で概略算定します。
家屋の被害や、人命も被害額として積み上げるので、少々胸が痛くなる作業ではあります。
ある程度、決まった単価があるので、単価が安い高いの議論はまた別の話になります。
これらの結果をもってB/C(費用対効果)等も試算され、一定の数値以上であることが事業化の条件となります。
これら一式の資料をもって、所轄省庁(あるいは県単独)によって事業が認可されます。
■測量
地形図を取得するために地形(平面)測量や横断測量などが実施されます。
本当は、予備設計などを経てから測量する方が正確になるので、平面図だけ先行取得して予備設計後に中心線や横断測量を実施する場合も多いです。
対象次第でしょうか。
縦横断図を取得する場合、ある程度は対策工の位置を想定して取得しないとならないので、モノによっては難易度が高くなります。
道路沿いの斜面であれば、道路に中心線を与えて横断図を取得すればよいので難易度は小さいですが、急傾斜地など、宅地の面する方向と斜面直交方向が斜に入ったりするので、最終の対策工線形だけを想像しても横断測量位置が妥当位置に入らない事も多いです。
このほか、現在はUAVレーザー測量で地形(点群)を取得してってのもあります。
あとはソコからデータ切り出しで対応する場合もあるでしょうが、現状、まだ実測横断図を使用する場合が多いでしょう。
細かい宅地周りや境界など、どうしても実測に劣る部分がレーザーには課題として残っています。
そう。ケースバイケース。
だから、難しい。
この仕事(斜面防災)は。
■詳細調査
詳細調査には色々とあります。
ボーリング調査が多いでしょうが、土石流なら渓流調査や立木調査もします。
地すべり対策なら地中変位観測や地下水観測等も必要です。
落石対策であれば落石発生源の調査が必要です。
必要に応じて岩石試験や土質試験なども並行します。
これらは、事前の事業計画などで何をするか入念に決められてはいますが、進捗する毎に過不足無いかチェックし最適化しつつ進められます。
単純なものなら数か月。
地すべり対策のように観測を必須とするなら数年以上の単位で期間を要します。
時間がかかるんですよね。
このへんが、受益者(一般の方)の方々からすると、遅い!って感情になるのでしょう。
■予備設計
ここで、対策工のアウトラインが完成します。
どのくらいの予算が必要かも解ってきます。
地質調査結果などから崩壊機構などを想定し、それに対する対策案を3案程度立案します。
それぞれに対して施工方法を踏まえた概算工事費を算出します。
施工性・維持管理・景観・コストなどを総合的に比較した工法比較一覧表を作成します。
これを基に、採用工法案を決定します。
ここで、詳細設計に向けて、追加の地質調査や測量等を行う場合も少なくありません。
もちろん、追加したことで、新たな問題が見つかり、詳細設計段階で工法が変わるなんてこともあります。
予備設計がシッカリしていると、詳細設計は形を整えていく作業に集中できます。
一方、予備設計が粗いと、詳細設計で再度比較検討なんてことも発生しますよ。。。。。。
■詳細設計~
予備設計で決定された工法を、詳細に設計します。
条件設定・構造計算・施工方法・仮設計画・設計図面・数量計算といった作業を経て、発注元(事業者)が対策工事の発注を行うための積算や工事仕様書を作成する資料が揃うのです。
細部まで詰めて検討するので、当然ながら期間もかかります。
事業内容によっては省庁説明などあって、認可されなければ進められないものもあります。
国から補助金が出るものは、どうしてもそういった傾向になります。
当然といえば当然なのですが、その辺も期間がかかる要因でもあります。
ですが、こういった省庁協議などで一元化?されることで、全国的に対策工にバラつきが出にくくなっているのだと思います。
地域毎に対策工の考え方や方法がバラバラだと、色々と問題が生じますからね。
話が逸れましたが。。。。
これらの成果(資料)を基に、事業者(発注者)によって工事設計書が作成され、工事が発注(入札)されるのです。
その後、落札工事業者によって対策工事が実施される運びとなります。
これら各ステップは前述のとおり期間を要し、全体では数年を経て行われるため、公共事業は遅い!なんて言われますが。。。。
それぞれの業務(ステップ)は数か月以上の期間を要しますので、冷静に考えれば期間がかかるのは当然なんだなと思います。
ですが、このことは、知っているから解る話であって、細かい部分まで知らない一般の方にしてみれば、さっさと工事しないさい!って感情になるのは理解できます。
もちろん、逐次、地元説明会などで状況が説明されることもありますから、この限りでは無いかもしれませんが。。。。
最後に話は逸れますが。
お互い、相手の事情を踏まえるということの大切さを思い知りますね。
こんにちは。
斜面防災設計の上岡地盤防災です。
今日は専門である斜面防災対策(土砂災害防止対策)事業の流れについてのお話です。
土砂災害防止対策の事業の流れ、すなわち、対策工事を行うために必要な設計図などを作成して対策工事を発注するまでの簡単な手順を説明します。
工事が発注される前までの流れという感じでしょうか。
なお、土砂災害の大分類として次の3つがありますが、これら全てを踏まえてたザクっとした説明とします。そう、大体どれにでも当てはまるという感じの説明で。
・がけ崩れ(崩壊・落石)
・地すべり
・土石流
■ステップ概要(流れ)
最初に、ステップ(流れ)の概要を列挙します。
・事業対象に選定
・基本調査と事業計画
・測量
・詳細調査
・予備設計
・詳細設計
土砂災害防止対策全般を踏まえてなので対象によっては手法も違うし、細かくは前後したり繰り返したりする作業もあるのでの、あくまで全体的なという流れです。
■事業(対策)対象に選定
まず、ソコが事業の対象に選ばれるところからです。
なぜ、ソコで土砂災害対策工事をするのか?
それは、法令等で指定されている場所であることが多いです。
そして、それを優先順位をつけて順番に対策していくのが一般的です。
一度に、全ての箇所を対策するのは、予算が無くて不可能です。
重点施策で予算が増えることがあっても短期で全部できることは無いです。
では、法令等で指定されているとは?
例えば代表的なのが「土砂災害警戒区域」等です。
既往であれば、急傾斜地崩壊防止区域だったり地すべり防止区域、砂防指定地などです。
結果、これらはオーバーラップしていることがほとんどですが。
それに加えて、地元からの陳情でしょう。
〇〇の渓流が危険で、住めない!とかの陳情。
このほか、各種点検業務で何らかの異常が認められた箇所。例えば災害の兆候が見えるとか。
それから、政策等によって重点対策分野に指定された等でしょう。
そんなこんなで、ソコが選ばれたのには、ちゃんとした理由があるのです。
これらは、事業箇所優先度を検討する建設コンサルタント業務なんかもあったりしますが、基本は発注者(事業者)でやられている作業だと思います。
■基本調査と事業計画の策定
この作業あたりから、建設コンサルタントが入ってきます。
もちろん、発注者(事業者)自前でやる場合もあるでしょう。
その場所で、対策工事をすることが決まったら。
まずはじめに、基本図(指定地資料など)を基に、保全対象や対策対象の概況について資料整理します。
(選定される際に、ある程度資料は揃っているはずですが)
この時に、各種法令に指定されていないか等も一通り調査されます。
調査と言っても、各窓口に閲覧などして確認していく形となります。
概ねは既往の指定地等の資料に記載されていますが、誤りが無いか、追加されていないか等の確認になります。
特に、保安林に指定されていたりすると解除の段取り等もあるので、確認漏れが無いようにしないとなりません。
工事に入る段階で、保安林にかかっている!なんてことになると、こりゃ大変ですから。
もちろん、風致地区とか自然環境保全関連の指定区域だと、相当に条件が厳しくなるのです。
それらの確認後、どのような対策工が考えられ、どのような測量・調査が必要で、といったようなアラスジのようなものを作成します。
作成したアラスジに基づいて、事業の概略コストも算出されます。
加えて、保全対象の価値を予め指定された単価で概略算定します。
家屋の被害や、人命も被害額として積み上げるので、少々胸が痛くなる作業ではあります。
ある程度、決まった単価があるので、単価が安い高いの議論はまた別の話になります。
これらの結果をもってB/C(費用対効果)等も試算され、一定の数値以上であることが事業化の条件となります。
これら一式の資料をもって、所轄省庁(あるいは県単独)によって事業が認可されます。
■測量
地形図を取得するために地形(平面)測量や横断測量などが実施されます。
本当は、予備設計などを経てから測量する方が正確になるので、平面図だけ先行取得して予備設計後に中心線や横断測量を実施する場合も多いです。
対象次第でしょうか。
縦横断図を取得する場合、ある程度は対策工の位置を想定して取得しないとならないので、モノによっては難易度が高くなります。
道路沿いの斜面であれば、道路に中心線を与えて横断図を取得すればよいので難易度は小さいですが、急傾斜地など、宅地の面する方向と斜面直交方向が斜に入ったりするので、最終の対策工線形だけを想像しても横断測量位置が妥当位置に入らない事も多いです。
このほか、現在はUAVレーザー測量で地形(点群)を取得してってのもあります。
あとはソコからデータ切り出しで対応する場合もあるでしょうが、現状、まだ実測横断図を使用する場合が多いでしょう。
細かい宅地周りや境界など、どうしても実測に劣る部分がレーザーには課題として残っています。
そう。ケースバイケース。
だから、難しい。
この仕事(斜面防災)は。
■詳細調査
詳細調査には色々とあります。
ボーリング調査が多いでしょうが、土石流なら渓流調査や立木調査もします。
地すべり対策なら地中変位観測や地下水観測等も必要です。
落石対策であれば落石発生源の調査が必要です。
必要に応じて岩石試験や土質試験なども並行します。
これらは、事前の事業計画などで何をするか入念に決められてはいますが、進捗する毎に過不足無いかチェックし最適化しつつ進められます。
単純なものなら数か月。
地すべり対策のように観測を必須とするなら数年以上の単位で期間を要します。
時間がかかるんですよね。
このへんが、受益者(一般の方)の方々からすると、遅い!って感情になるのでしょう。
■予備設計
ここで、対策工のアウトラインが完成します。
どのくらいの予算が必要かも解ってきます。
地質調査結果などから崩壊機構などを想定し、それに対する対策案を3案程度立案します。
それぞれに対して施工方法を踏まえた概算工事費を算出します。
施工性・維持管理・景観・コストなどを総合的に比較した工法比較一覧表を作成します。
これを基に、採用工法案を決定します。
ここで、詳細設計に向けて、追加の地質調査や測量等を行う場合も少なくありません。
もちろん、追加したことで、新たな問題が見つかり、詳細設計段階で工法が変わるなんてこともあります。
予備設計がシッカリしていると、詳細設計は形を整えていく作業に集中できます。
一方、予備設計が粗いと、詳細設計で再度比較検討なんてことも発生しますよ。。。。。。
■詳細設計~
予備設計で決定された工法を、詳細に設計します。
条件設定・構造計算・施工方法・仮設計画・設計図面・数量計算といった作業を経て、発注元(事業者)が対策工事の発注を行うための積算や工事仕様書を作成する資料が揃うのです。
細部まで詰めて検討するので、当然ながら期間もかかります。
事業内容によっては省庁説明などあって、認可されなければ進められないものもあります。
国から補助金が出るものは、どうしてもそういった傾向になります。
当然といえば当然なのですが、その辺も期間がかかる要因でもあります。
ですが、こういった省庁協議などで一元化?されることで、全国的に対策工にバラつきが出にくくなっているのだと思います。
地域毎に対策工の考え方や方法がバラバラだと、色々と問題が生じますからね。
話が逸れましたが。。。。
これらの成果(資料)を基に、事業者(発注者)によって工事設計書が作成され、工事が発注(入札)されるのです。
その後、落札工事業者によって対策工事が実施される運びとなります。
これら各ステップは前述のとおり期間を要し、全体では数年を経て行われるため、公共事業は遅い!なんて言われますが。。。。
それぞれの業務(ステップ)は数か月以上の期間を要しますので、冷静に考えれば期間がかかるのは当然なんだなと思います。
ですが、このことは、知っているから解る話であって、細かい部分まで知らない一般の方にしてみれば、さっさと工事しないさい!って感情になるのは理解できます。
もちろん、逐次、地元説明会などで状況が説明されることもありますから、この限りでは無いかもしれませんが。。。。
最後に話は逸れますが。
お互い、相手の事情を踏まえるということの大切さを思い知りますね。
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