「斜面安定解析の逆算と土質定数」
斜面安定解析の逆算は、建コン斜面防災チームなら誰でも係わる話でしょう。
この逆算、便利なツールなのですが、いつも思う事があります。
それは、土のせん断強度である、粘着力c内部摩擦角φの取り方。
どゆこと?
基準書のあるじゃん?
そうなんですけどね。。。。。
私の思いの丈を書いてみますね(笑)
■斜面安定解析の逆算とは
そもそも斜面の安定解析における逆算ってのは、斜面の安定状態を仮定し、それに合うように定数を合わせ込んでいくって感じの話です。
一番多いのが、安全率をFs=0.95~1.05に固定して、土質定数を遊ばせる。
中でも、粘着力cと内部摩擦角φのいずれかを未知の数値として逆算で求めるケースが多いでしょう。
次の式のような感じです。
これは、内部摩擦角φを30°としておいて、粘着力cを求めたもの。
安全率はFs=1.0に設定しているので、それを満たすcは14.16ですよ。
って式。
均衡状態を仮定し、モデル化するというもの。

斜面屋ならずも、よく見る内容だと思います。
定数の設定は、「道路土工 切土工・斜面安定工指針(平成21年度版)」のP.309~400あたりを見てもらった方が早いから割愛するけれども。。。。
粘着力cを固定する場合は、すべり層厚から経験値を入れたりします。
内部摩擦角φを固定する場合は、擁壁工指針に示される砂質土30°、礫質土35°の裏込め土の内部摩擦角を参考にしたりします。
単純に、砂質土ベースの30°ですって決めてもいいんだと思います。
このうち、内部摩擦角φを固定する方法は道路土工指針には示されていないですが、旧ネクスコの基準なんかではよく出てきますよ。
併せて、粘着力cを固定する場合、明確なすべり面が形成されていない場合、すべり層厚から導くことに疑問を持つ方もいます。
すべって無いのに、すべり層厚って??
そんな感じです。
また、土質試験あるいは標準貫入試験N値から内部摩擦角φや粘着力cを設定する場合もありますが、点のサンプルであったり、バラツキが多くて信頼性に欠ける部分があったりする場合は、基準書の丸まった数字を使うのがスッキリします。
どうせ、均衡法でモデル化されるので、多少、定数が変わったところで大勢に影響は無いのです。
こだわるトコロは、ソコじゃない。
はず。
もちろん、こだわりは無くとも、スジ(基準)は通っているってのは絶対だよ。
そのうえで、って話。
そのうえで、崩壊機構や変状範囲、対策工法だったり、そっちにコダワリを入れないと。
機能性・施工性だったり経済性も含めた総合的な対策検討にチカラとこだわりを入れないと。
ね。
自然が相手なんで、意外に、創造力を必要とする作業(仕事)なんですよ。
その創造力のところに、こだわりってヤツを入れましょうよ。
■すべり面における実際の粘着力c
で、私がいつも思う事。
粘着力なんですよね。。。。。
粘着力って、歪が進行すると、失われるんです。
なので、慢性的な地すべりではすべり面に粘着力は残っていないのです。
下図のように、ひずみが進むと、いずれ残留強度に達するのです。
なので、何でもかんでも、層厚の1/10で粘着力cを与えればいいってもんじゃないんです。

これを土質試験で再現したものが、リングせん断試験であり、繰り返し一面せん断試験だったりします。
一方のφはというと、ほぼ変わらないと思ったらよいです。
なので、上図の残留強度の状態は、ほぼ内部摩擦角φの強度ということになります。
いかがですか?
これを踏まえて、安定解析の作業に直面すると、どのあたりの数値を使うのが妥当なのか?
と、疑問が湧いてくるはずです。
でもね、前出の基準書なんかには、そんな細かい話は出てきません。
出てても、見ない人が多いような部分にチョロっと書いてあるくらいです。
なので、面倒なことをせず、単純モデル化する人が多いのです。
私もそうですが。。。。。
単純であれば単純であるほど説明も容易なのです。
その魅力には勝てません。
■基準そのまんまが真実ではないが説明が簡単
何度も言いますが、単純なモデル化ほど魅力的なものは無いのです。
あらゆる意味で簡単ですから。
むしろどこまで簡略化できるかは腕の見せ所では?
その過程で、実際の現象は明らかであるものの、モデル化するに際しては無視される項目というのは良くあるものです。
複雑にすると、応用が利きにくくなることもあるのでしょう。
安定解析のモデルであれば、いずれかのファクターを未知として、単純に逆算で求めた数値を使うのが簡単だからです。
道路土工指針に書いてあるようにやりました!
ってのが、説明が早いし、基準書に書いてあるじゃん!って言えるから簡単、確実なのです。
余計な事はしない(笑)
ですので、基本、基準書に書いてあることをそのまま実行するのが正義?なのです。
だけど、学術的な面から見ると、真実とは少しズレたこともやっている場合があります。
先ほどの土のせん断強度なんかもそうです。
だから、私は、いつも後進に言います。
基準書は基準書であり、これに忠実にやるのがいい。
正義かも知れん。
だけども、その背後にある細かな部分まで知って、理解しないとならない。
と。
それらを知ったうえで、大勢に影響のない部分はモデル化の過程でできるだけ簡略化する。
そういったイメージをもっておく。
これが大事だろうと。
■結局は均衡モデルなので地形変化なければ大差なしの現実
で、安定解析に限って言うと、結局、均衡状態でモデル化しているので、粘着力cが大きかろうが、内部摩擦角φが大きかろうが、抑止力などには大差が無いのです。
細かい話をすると、グラウンドアンカー工の締め付け効果は(締め付け効果をみる場合)内部摩擦角φに支配されたり、排土工を行う場合には、粘着力cを高めにして、すべり面を長く残し(粘着力cが発揮)上部土塊だけ排除すれば解析上の効果は絶大です。
その逆で、粘着力cが無いのに、排土工を行ってもあまり利きません。
この場合、内力分布のうち滑動力が大きいゾーン(一般的には頭部側)を集中的に排土しないと止まりません。
でも、これって、数字のマジック?トリック?遊び?なんですよね。解析上の。
現場での事象は、事実は、そんなマジックではないんです。
なので、究極のところ、そんな大差はないんだけども、極端に振ったモデル設定だと、対策工の過不足が露呈するリスクもあります。
だから、現場の実態(状態)と、解析モデルの癖、採用する対策工の相性を鑑みて仕事をしないとならない。
そう、思う訳です。
え?
そんなの前から理解して、ちゃんとやっているって?
ヨカッタ~。
その調子で頑張ってください。
心配して損しましたね(笑)
心配性なものでして。
では、何かあったら、いつでも相談してくださいね。
斜面安定解析の逆算は、建コン斜面防災チームなら誰でも係わる話でしょう。
この逆算、便利なツールなのですが、いつも思う事があります。
それは、土のせん断強度である、粘着力c内部摩擦角φの取り方。
どゆこと?
基準書のあるじゃん?
そうなんですけどね。。。。。
私の思いの丈を書いてみますね(笑)
■斜面安定解析の逆算とは
そもそも斜面の安定解析における逆算ってのは、斜面の安定状態を仮定し、それに合うように定数を合わせ込んでいくって感じの話です。
一番多いのが、安全率をFs=0.95~1.05に固定して、土質定数を遊ばせる。
中でも、粘着力cと内部摩擦角φのいずれかを未知の数値として逆算で求めるケースが多いでしょう。
次の式のような感じです。
これは、内部摩擦角φを30°としておいて、粘着力cを求めたもの。
安全率はFs=1.0に設定しているので、それを満たすcは14.16ですよ。
って式。
均衡状態を仮定し、モデル化するというもの。

斜面屋ならずも、よく見る内容だと思います。
定数の設定は、「道路土工 切土工・斜面安定工指針(平成21年度版)」のP.309~400あたりを見てもらった方が早いから割愛するけれども。。。。
粘着力cを固定する場合は、すべり層厚から経験値を入れたりします。
内部摩擦角φを固定する場合は、擁壁工指針に示される砂質土30°、礫質土35°の裏込め土の内部摩擦角を参考にしたりします。
単純に、砂質土ベースの30°ですって決めてもいいんだと思います。
このうち、内部摩擦角φを固定する方法は道路土工指針には示されていないですが、旧ネクスコの基準なんかではよく出てきますよ。
併せて、粘着力cを固定する場合、明確なすべり面が形成されていない場合、すべり層厚から導くことに疑問を持つ方もいます。
すべって無いのに、すべり層厚って??
そんな感じです。
また、土質試験あるいは標準貫入試験N値から内部摩擦角φや粘着力cを設定する場合もありますが、点のサンプルであったり、バラツキが多くて信頼性に欠ける部分があったりする場合は、基準書の丸まった数字を使うのがスッキリします。
どうせ、均衡法でモデル化されるので、多少、定数が変わったところで大勢に影響は無いのです。
こだわるトコロは、ソコじゃない。
はず。
もちろん、こだわりは無くとも、スジ(基準)は通っているってのは絶対だよ。
そのうえで、って話。
そのうえで、崩壊機構や変状範囲、対策工法だったり、そっちにコダワリを入れないと。
機能性・施工性だったり経済性も含めた総合的な対策検討にチカラとこだわりを入れないと。
ね。
自然が相手なんで、意外に、創造力を必要とする作業(仕事)なんですよ。
その創造力のところに、こだわりってヤツを入れましょうよ。
■すべり面における実際の粘着力c
で、私がいつも思う事。
粘着力なんですよね。。。。。
粘着力って、歪が進行すると、失われるんです。
なので、慢性的な地すべりではすべり面に粘着力は残っていないのです。
下図のように、ひずみが進むと、いずれ残留強度に達するのです。
なので、何でもかんでも、層厚の1/10で粘着力cを与えればいいってもんじゃないんです。

これを土質試験で再現したものが、リングせん断試験であり、繰り返し一面せん断試験だったりします。
一方のφはというと、ほぼ変わらないと思ったらよいです。
なので、上図の残留強度の状態は、ほぼ内部摩擦角φの強度ということになります。
いかがですか?
これを踏まえて、安定解析の作業に直面すると、どのあたりの数値を使うのが妥当なのか?
と、疑問が湧いてくるはずです。
でもね、前出の基準書なんかには、そんな細かい話は出てきません。
出てても、見ない人が多いような部分にチョロっと書いてあるくらいです。
なので、面倒なことをせず、単純モデル化する人が多いのです。
私もそうですが。。。。。
単純であれば単純であるほど説明も容易なのです。
その魅力には勝てません。
■基準そのまんまが真実ではないが説明が簡単
何度も言いますが、単純なモデル化ほど魅力的なものは無いのです。
あらゆる意味で簡単ですから。
むしろどこまで簡略化できるかは腕の見せ所では?
その過程で、実際の現象は明らかであるものの、モデル化するに際しては無視される項目というのは良くあるものです。
複雑にすると、応用が利きにくくなることもあるのでしょう。
安定解析のモデルであれば、いずれかのファクターを未知として、単純に逆算で求めた数値を使うのが簡単だからです。
道路土工指針に書いてあるようにやりました!
ってのが、説明が早いし、基準書に書いてあるじゃん!って言えるから簡単、確実なのです。
余計な事はしない(笑)
ですので、基本、基準書に書いてあることをそのまま実行するのが正義?なのです。
だけど、学術的な面から見ると、真実とは少しズレたこともやっている場合があります。
先ほどの土のせん断強度なんかもそうです。
だから、私は、いつも後進に言います。
基準書は基準書であり、これに忠実にやるのがいい。
正義かも知れん。
だけども、その背後にある細かな部分まで知って、理解しないとならない。
と。
それらを知ったうえで、大勢に影響のない部分はモデル化の過程でできるだけ簡略化する。
そういったイメージをもっておく。
これが大事だろうと。
■結局は均衡モデルなので地形変化なければ大差なしの現実
で、安定解析に限って言うと、結局、均衡状態でモデル化しているので、粘着力cが大きかろうが、内部摩擦角φが大きかろうが、抑止力などには大差が無いのです。
細かい話をすると、グラウンドアンカー工の締め付け効果は(締め付け効果をみる場合)内部摩擦角φに支配されたり、排土工を行う場合には、粘着力cを高めにして、すべり面を長く残し(粘着力cが発揮)上部土塊だけ排除すれば解析上の効果は絶大です。
その逆で、粘着力cが無いのに、排土工を行ってもあまり利きません。
この場合、内力分布のうち滑動力が大きいゾーン(一般的には頭部側)を集中的に排土しないと止まりません。
でも、これって、数字のマジック?トリック?遊び?なんですよね。解析上の。
現場での事象は、事実は、そんなマジックではないんです。
なので、究極のところ、そんな大差はないんだけども、極端に振ったモデル設定だと、対策工の過不足が露呈するリスクもあります。
だから、現場の実態(状態)と、解析モデルの癖、採用する対策工の相性を鑑みて仕事をしないとならない。
そう、思う訳です。
え?
そんなの前から理解して、ちゃんとやっているって?
ヨカッタ~。
その調子で頑張ってください。
心配して損しましたね(笑)
心配性なものでして。
では、何かあったら、いつでも相談してくださいね。
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